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立山道中記 彼岸編

装束は白ずくめ、下着からきちんと左前。
死に装束ですからね。
着替えるゴタゴタの模様は、現世編番外なので省略。

バスで会場へ。
緊張してます。65人。死出の旅。

閻魔堂に入堂して正座します。
既に彼岸に片足突っ込んでますよ。

半分は、知性と理性の脳みそが堂内あますところなく
じろじろ観察してます。
鄙びたお堂だけれど、きちんと守られている生きている場所だな~
半分は、心の動きのままに振舞おうと思っています。

正面の閻魔様の両脇に、今はない「ウバ堂」に祭られていた
「おウバ尊」が数体、いらっしゃいます。
立山の「ウバ尊」は、特殊な漢字で書きますので
あえて「カナ」で書きますね。

その中の1体・・ああ。この方が呼んだんだ。と思いました。

「ウバ堂」は明治政府の廃仏毀釈で取り壊されたそうです。
そのせいで、未だに「ウバ神」の本当の姿は解明されていません。
「山の神」「大地母神」「水の神(竜蛇神)」
「いざなみのみこと」「三途の川の奪衣婆」
「出産の守り神」
などなど、色んな説があります。
布橋灌頂の行事も、明治時代に廃止。
その後、平成の村おこしで復活しました。
今回が3回目、だそうです。

さて、宗教行事というものは、
その中で行われたことは「口外しない」というような
決まりごとが多いと思います。

今回、分かったのは「口外しない」ではなくて
本当の所は「口外できない」のではないか。と思いました。
なぜなら、その時に感じたことは各々バラバラで、
そのうえ、とても個人的なことで、
統一して説明できないことであるような気がするのです。

コメントを公に、といわれたら
「神秘的」とか、
「感激しました」という言葉にしか出来ないと思います。

だから以下に書くことは、私が個人的に感じたことで
必ずしも、普遍的なことではないとお断りしておきます。

民俗学系の本などで、既に公表されているので、
儀式については、特に秘密はありません。

閻魔堂に入る時点で、私は死んでいます。
で、閻魔様の前で授戒を頂き、
真言を教えてもらって、念仏唱えて、
三途の川を渡る準備をするです。
引導師は真言宗の大阿闍梨。

三昧耶戒を受け、授戒の誓いを述べます。
教えてもらう真言は
不動真言。金剛界大日如来真言。阿弥陀真言。
後は、ちょっと不明ですが、
私には愛染明王の真言に聞こえた。
そして念仏を唱えるのですが・・・

声が出ないんですわ。
授戒の誓いくらいから、既に声が出ない。というよりは
出してもすごい力の弱い、弱弱しい哀しい声しか出ない。
哀しいというよりも、はっきり言って情けない。
情けなさで泣けてくる。
これからこんなことで、大丈夫なんだろうか、
不安が胸に迫ります。
真言もヘロヘロ。念仏もヘロヘロ。

前夜の僧侶説明では、堂入りしたら一人です、と
言われたいたけれど、周りの人の声をよく聞こえない。
こらあ はっきりいって、説明しなくても
一人だよなあ~てゆうか、この声が私の本当の声なんだろうか、
だとしたら、なんたら、弱弱しい哀しい声なんだろうなあ~と。

堂を出て列を整え、目隠しをして、菅笠を被ります。
この辺はまだ呑気なもので、
周囲にも「なあ目隠しどうやってする?」とか
「きちんと笠被れてる?」とかの声もします。
目隠しは、うすい白布のはずですが、
してしまえば、見事に亡者の視線ですよ。
周囲の同じ装束の人も、亡者にしかみえない。
目隠しの時点で、言葉が無くなりますた。
亡者の列に自分が並んでいる、それだけ。

あの暗い高い木は杉の木だけど、
てっぺんの方でキラキラしているのはなんだろう。
天狗かな?とか思います。
ヒラヒラと空を舞っているのはなんだろう。
列が進み始めます。
両手は合掌。数珠をかけているので、動かせません。
静々と進む。

閻魔堂は少し小高い場所にあり、橋は下のほうにあります。
ゆえに。。自然石の石段を目隠しで降りていくわけで。
目隠しする前に、階段の存在はなんとなく分かっていたし、
石段の両脇にはお坊さんがいて、
「ここから階段です」と教えてくださっているのだけれど、
不安です。
目が見えないで歩くことは、こんなに不安で怖ろしいものなんだなあ。
呑気な方の自分が考えます。
でも、歩を進めるたびに、呑気な自分は段々小さくなっていく、
雅楽と山伏の法螺貝と真言宗の葬送儀礼の音曲。
3つが合併してすごい音です。
石段の周囲にあるのはお地蔵様?だよな。
赤い前垂れがうっすらと分かる。
その前にお灯明がチラチラ揺れる。
石段を降りるのが怖ろしい。歩を進めるのが怖ろしい。
亡者の列は遅遅とした動きしか出来ません。

途中で、菅笠の上の部分を2回もゴツンとはっきり叩かれた。
その時は、後ろの人かな?と思ったけれど、
よく考えたら、みんな合掌しているから
笠なんて叩けるわけないんですよね。
それに、仮に後ろの人だったとしても、
笠の端と端がぶつかるくらいが、せいぜいです。
なんだったんだろ。

ぢつは。。途中で一度まじにコケそうになりました。
お坊さんに助けてもらった。
紫の僧衣とキレイな袈裟が見えた(感じた)のと、
塗香の匂いが強く香ったので、お坊さんと思います。
階段ですべって(前夜まで雨)よろめいたのですが、
肱を支えてもらって、立ち直りました。

長い時間かけて、石段を降りると、布橋。
赤い欄干の橋に3筋に白い布が敷いてあります。
太鼓橋になっているのですが、
高く、長くみえます。
橋の向こうは、白い靄がかかったようになってて見えません。
渡りはじめます。
石段降りる時はとても暑かったのですが、
水が流れているからでしょう、橋には冷たい風が通り抜けていきます。
水の音が激しく、音楽の音も風と一緒にひときわ大きく聞こえます。
バスから見えた小さい川にかかる可愛い橋のイメージはなくなりました。
真剣に渡ります。
長いのぉ~こんなに長い長い道のり還るの大変だよな~
10万億土とは、よくいったよな~
なんだか、ぼんやりしてきます。

それにしても橋長いな~と思ったら
いつの間にか、渡り終わってた。

これも前夜の説明で、橋の向こうは彼岸だから
お墓が本当にあるし、見物人もたくさんいるって
聞いていたので、パシパシっと光るのは
カメラのフラッシュだって分かった。

人のざわめきも分かるけれど、
それに交じってさ~変な影がありませんか?
灰色でぼんやりした影って何?
てゆうか、全身同じ色の人っていないだろ?
んーーどーみても人が座っているポージングではないのですが。
・・・・・なんか、交じってる?
ちょっと上を見上げると、不思議な鳥の姿がよぎる。
人と人とは認識できないもの間を縫って歩くけれど、
これも長いよう(泣)疲れてきたよう(泣)
時々涼しい風が吹くけれど、暑いよう(泣)

目の前に真っ白い地面が見えてきた。
反射で眩しいくらい。そこに上っていくようだよ。
やった~ゴールは近いぜ。
立山道中記 彼岸編_c0010510_13482942.jpg
眩い白い光る床を進んで「ウバ堂」に入ります。
目隠しはまだ取れないけれど、
中が真っ暗なのは分かる。
正座すると思いのほか疲れているのを感じて、
歩かなくていいんだ~ホッとする。
声明が始まって、儀式開始。
ここでの儀式は事前に全く説明なし。
その都度、指示を出しますってことでした。
礼拝後、合掌しつつ、念仏を声明と一緒に唱える。
どんどん唱える。

危惧したとおり、最初はぜんぜん声が出ないで
やはり泣きたくなるも、徐々に声が出てきはじめる。
声明がガンガレといってくれますた。
光が見えるなんて神秘的な気分ではないけれど。
私はね。ヴォーカルなんです。
音律そろえて、堂々と唱和したいじゃないですか。
南無阿弥陀仏
阿弥陀如来に帰依し奉る。
背中に1本筋が通るように、お腹から声が出ました。
あとはもう自分のペースで朗々と。
南無阿弥陀仏
阿弥陀如来に帰依し奉る。

念仏終了の合図とともに、深く礼拝し、
目隠しを取ると。
目の前の扉が開いて、まばゆい景色の中に
立山連峰が浮かびあがります。
晴れといえ、雲が多かったので
立山は雲に隠れていたけれど、
その向こうには間違いなく在る
揺るぎない存在。

帰りは同じ道を目隠しを外して、歩きます。
生への帰還。
普通にスタスタ歩けることがうれしい。
そして、近いなんてもんじゃない。
10分もない距離ですよ。
墓の中の道って短いし、
長い橋?はあ?
難儀な石段?はあ?
だって下から閻魔堂見えるじゃん。
雪駄で行列だから、10分くらいかかるけど
ジーンズ、スニーカーだったら5分もかからない。

論理的に言えば、
感覚の遮断(目隠し、音楽、香など)による意識の混濁と
同じ言語の繰り返しによる意識の高揚に
よって作り出される宗教的法悦。とか。
書けますけどね。現代人だから。

でも感じたことは、確かなことであって、
やはり得難い体験をしたのだと思う。
着替えに帰るバスの中で、
どなたかがつぶやいた言葉が耳に残ってます。
「4万円払っても、布橋を渡る理由があったということだ」

蛇足ですが、帰りに石段登るとき、
両脇にボランティアの方がいらっしゃって
口々に「ご苦労様」「お疲れさま」と
言ってくださいました。
年配の方には合掌までされて、なんだか恥ずかしいよ。
「ありがとうございました」と答えたのですが、
お堂の前で、その中の一人の方と雑談してて、
「石段の中ほどでコケそうになっちゃって~
お坊さんに助けてもらって~はずかしかったですよ」と、
話したら・・・・・
「石段は、最初に降りるところにはお坊さんがいらっしゃるけど、
そこから先は、黄色いTシャツのボランティアの担当で、
お坊さんはひとりもおりませんでしたよ。」
とのことでした。
「いい経験をなさいましたね」とも。

助けてくださったのが、どなたであっても
ありがとうございます。
で、締め括るといたします。
by divaof10gum | 2006-09-19 13:48 | オカルティw


ちゃる様の日々の思いのたけを綴る。ワイン、バンド、オカルト、お洒落、ゴージャスなどについて


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